経営計画は何のため?誰のため?

経営計画書。社員20人以下社長の最も身近な相談相手の一人である税理士は作れます。銀行員も作れます。ネットで検索すれば、作成してくれるコンサルタントが見つかります。

では、経営計画書は何のために、誰のためにあるのでしょうか。

何のため?誰のため?

経営計画書は社長のためのものであり、社員のためのものでもあります。

作る前に前提の設定が必要です。ここが例えば「融資を受けるため」「作るべきと言われたから」となっていては、作る意味は薄れます。

経営計画書を作るのは、何のためなのか。誰のためなのか。この出発点が、作る意味の大きさを左右します。

数字の世界に生きてきて、一周回って思うのは、何だったら数値計画の無い経営計画書でもよい、ということです。

もちろん、数値計画は必要で、それがないと取り組んだことの効果を検証しきれないし、目標数値があるからこそ到達点が明確になります。
ただ、それはあとから作れますし、税理士や銀行員やコンサルタントがいろんな数値を分析すれば作ることができます。

例えば、決して上手な文章になっていなくても、感動する手紙やスピーチがあります。これは、なぜ感動するのでしょうか。

答えは、「想い」がそこに込められているからですね。

経営計画書の「何のため?誰のため?」が社長と社員のためというのは、つまり、社長の思いや考えが言葉になっていて、それが社員に伝わり、行動にあらわれるために経営計画書がある、ということです。

体裁が整った経営計画書は、社外の人間にとっては「よく分かりました」となるように作れても、社長が腹落ちしていたり、社員が理解できることとは別です。

では、なぜ社長が腹落ちし、社員が理解することが大事なのでしょうか。

その売上、その利益、誰にとって必要?

売上はいろんな表現で表されますが、ここでは「単価×数量」とします。売上から費用を引いて残ったものが利益です。当たり前のことですが、この売上や費用は、人の行動が積み重なったものを数字で表したものです。つまり、人の行動が売上や利益を作り出します。

では、売上と利益はなぜ必要なのか。答えは一つ。会社が生き残るために必要です。

中小企業は「会社=社長」と言える会社が非常に多く、そう考えると、社長にとっても売上と利益は生き残るために必要です。

では、社員にとってはどうでしょうか。

実現の可能性は別にして、社員は「転職」という形で会社を移動することができます。そうなると、社員にとって会社の売上や利益は必要とは言い切れない、ということになります。会社と同様、売上と利益が必要となるのは、その会社に居続ける場合ですが、移動するのであれば必要ではない、とも言えます。

社長の言葉が同じゴールを目指すまとまりを生む

経営計画がなぜ重要なのか。京セラの稲盛名誉会長の「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」に当てはめて考えてみると、よくわかります。

熱意と能力は0〜100ですが、考え方は▲100〜100です。いくら熱意と能力があっても、考え方の部分がマイナスでは、結果はマイナスになります。

では、会社にあてはめた場合、「考え方」とは何か。

「会社=社長」であれば、社長の考え方となります。

その考え方は、どうやって伝えるのでしょうか。

「考え方」は言葉にされているか、その言葉に社長の想いがこもっているか、その想いに社員が応えたいと思うか、社員のその感情が行動に反映されるか、その行動は「考え方」に沿ったものなのか。

このように考えると、「考え方」と「行動」が紐づいているか、ということが重要になります。
この「考え方」を表すのが経営計画書ということになります。

そして、社長と社員の考え方の粒が揃うことで、熱意は増し、その熱意が能力を引き上げます。このサイクルを作り上げることで、会社のメンバーが同じゴールを目指してまとまった状態を作り出すことができます。

経営計画書は絶対に必要か

結論から申し上げると、絶対に必要とは思いません。なぜなら、現実として、経営計画書が無くても会社の安全性も収益性も良好な会社は存在します。

これまでたくさんの経営者の方にお会いしてきましたが、経営計画書が無くても「良い会社」と言われる(定義は人によりけりですが)会社を経営されている方はいます。
ただ、そのような経営者に対する印象としては、明らかに他の経営者よりもどこかの能力が突出しているというような「その人だから」という印象を抱かずにはいられない、ということになります。

また、「そんなもの(経営計画書)いらないでしょう」と言いながら、いろいろお話を聞くと「できてしまっている」という印象を持つ社長にも出会いました。
ただ、そうはいっても離職率が高かったり、社長はさらなる成長を願っているのに成長が止まっている、という状態であったりします。

経営計画書は会社の規模が一定以上になってから作る、というものでもありません。
今、この瞬間から作成に着手しても早いなんてことはないものです。

社員の立場からすれば、将来がイメージできない、どうなっていくのかわからない、心に芽生える「なぜ?」の疑問が解消されない会社に対して、熱意をもって行動したり、安心できると思えることはないでしょう。

つまり、絶対必要かと言われると絶対ではない。ただ、今後も事業を続けていくなら間違いなくあった方がよい、ということになります。
社長の想いや考えがわからない・見えない企業かわかる・見える企業、社員はどちらの企業に身を置きたいかと考えると、必然的に答えはでます。
そして、確実に言えることは、地図もなしに目的地には辿り着けません。そして、目的地を設定しないと迷走するか、「現状維持という名の衰退」という状況になるということです。

おわりに

創業したときの想いや「こうなりたい」という願いがあり、まさに人生をかけて経営をされている社長。
でも、そんな想いや願いを社員の方々と共有できていない様子を窺うと本当にもったいないと思います。

想いは伝わるとはいうものの、伝えることをしないと伝わらないし、願うだけでは伝わらないですよね。

伝わる言葉で伝えることに、経営計画書の作成は非常に有効です。

もし、経営計画書がなく、なんだか上手くいかないなぁと思うことがあれば、自分の想いや考えを言葉にできる経営計画書の作成をおすすめします。

 

【参考】
京セラ株式会社.”6.人生を考える 人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力”.稲盛和夫 OFFICIAL SITE
https://www.kyocera.co.jp/inamori/philosophy/words43.html(参考:2022.2.20)

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