社員の成長のために上司が果たす役割

ここでは、部下の成長のために上司が果たす役割について書きます。

社員20人以下の社長であれば、リーダーとマネージャーの役割を兼ねているケースも多いと思います。

今回はマネージャーの役割を中心に書きますので、兼ねている場合はマネージャーの部分に対して参考になればと思います。

部下の成長の基本

育成に関して、さまざまな価値感があるでしょうし、その価値感に基づいて部下を育成しているケースは非常に多いと思います。ただ、価値観で育成すると、過去の自分の経験に寄りすぎたり、自分が「良し」とするタイプではない部下がいる場合、その部下の育成が難しくなるということが起こります。

とはいえ、マネージャーのAさんとBさんでは、全く同じ人間ということはありえないので、違いは生まれます。ただし、外してはならないポイントはあります。20人以下の会社であれば、上司と呼ばれる立場の人は少なく、「Aさん(上司)とBさん(部下)は合わないから組み合わせを変えよう」と思っても変えようがない、という状況があります。また、部下と呼ばれる人の数が少ないため、部下の成長度合いが及ぼす影響度は大きいと言えるでしょう。

部下の成長の基本は以下の3つになります。

■方向性をしっかりと伝える
■方向性の中で自分は何を求められているかを伝える
■成果の評価

では、それぞれ見ていきましょう。

方向性をしっかりと伝える

方向性を決めるのはリーダーの役割です。リーダーが決めた方向性に対して、具体的にどうするのかを伝えるのがマネージャーの役割です。「会社を強くするリーダーやマネージャーになる①」の序盤でも書きましたが、リーダーが決めた方向に対して会社を動かす役割が求められます。リーダーとマネージャーの役割を兼ねている社長であれば、方向を決めるだけでなく、具体的にどうするのかまで伝える役割を担っています。

方向性をしっかり伝えられないと、どういうことが起こるのでしょうか。

まず、どこに向かうか、どちらに向けばいいのか部下が分からないということになります。言い換えると、目の前のことをこなすだけの状況が続いたり、部下が部下の価値感で向かう方向を決めようとすることに対して、「なぜそちらの方向ではダメなのか」を伝える術がない、とも言えます。

部下の立場からすれば、この状況は非常に動きにくいのです。チャレンジしろと言われても、どの方向に向かってチャレンジすればいいのか分からない。良いと言われることは上司の価値感、ダメと言われることも上司の価値感だから、上司の価値感に近い部下はいいですが、価値感から遠い部下は「言われたことだけやろう」となってしまいます。また、近くも遠くもない部下は不信感を抱くことになります。

そして、リーダーとマネージャーが別々であればこのような状況を回避・改善させる余地はありますが、リーダーがマネージャーを兼ねている場合は課題がどんどん大きく、深くなってしまいがちです。

行き先の分からない船に乗るのは不安ですよね。また、行き先の分からない船のクルーが「オレはこっちだと思うよ」「私はあっちだと思うよ」となっていては、推進力は生まれません。

まずは、方向性をしっかり伝えることが必要です。

方向性の中で自分は何を求められているかを伝える

方向性を伝えたら、次は部下に「自分は何を求められているか」を伝えます。これは言い換えると、未来の姿を提示するということになります。

つまり、どうなってほしいか、そのためにどのようなことが求められるのか、そのためのステップはどれだけあるか、それぞれのステップはどのくらいの期間を想定しているか、というようなことを伝えます。

ただ、これだけのことを伝えようとすると、それぞれの要素が決められていないと伝えられません。もし決められていないなら、これから決めればよいのです。

まずはどうなってほしいか、を伝えることからでしょう。その際の注意点として、「あれも」「これも」「それも」「どれも」できるようになってほしい、とならないようにすることです。受け手が困惑します。

何を求められているかを伝えることで、部下は会社の方向性と自分がやるべきことを一致させることができます。

成果の評価

評価の基本は「測れるか」になります。例えば、「がんばっているかどうか」では評価のしようがありません。そのがんばりはどんな目標に対してどれだけ達成されたか、ということが分からなければ、部下はなぜ評価されたのか、なぜ評価されなかったのかが分かりません。

また、評価を成長につなげようとした場合、測れるものでないと過程の評価がしにくいという面もあります。

例えば、部下が「過程を評価してほしい」と思っている場合、その過程とはいったい何なのか。評価の基準が「測れるもの」となっていなければ、冒頭のように過程の評価が「がんばっているかどうか」になってしまいます。

過程の評価とは、言い換えると「目標に対する成果の変化への評価」とも言えます。例えば、「先月は○○だったけど、今月は■■だった」という変化への評価です。この変化を評価しようと思うと、評価する側が変化を言葉にできることが必要です。そして、成果の変化が何に基づいているものなのかを把握しておく必要があります。把握できていれば、それを言葉で部下に伝えられて、部下は理解・納得できるようになります。

成果の変化が何に基づいているかを把握しようとすれば、日頃からのコミュニケーションが重要になります。そのためには、部下の話をしっかり聞くことが重要になります。上司は聞いているつもりでも、部下は話を聞いてもらえないと思っているというケースが多いので、注意が必要です。

おわりに

成長スピードは個人個人で違います。これは、当然のことです。

「成長を待つ余裕がない」「人を育てる余裕がない」という一方で、「人が足りないけど採用できない」「採用したいけどいい人がこない」とも思っている、ということがあります。

その場合、いい人がくるまで待つのかどうか、採用できるまで人が足りないままでいくのか、という選択をすることになります。そして、待つなら今のまま、採用できないなら人が足りないまま、という状況が続くということです。また、いい人が来ることやいい人が採用できることは「いつそうなるか分からない」という悩ましいことでもあります。

となると、今の社員の能力を引き上げなければ状況は何も変わらない、ということになります。

でも実は、いままで決めていなかったこと、部下に示していなかったことを改善すれば、部下が成長する、部下を育てられるということができるようになります。

今いる部下には、まだまだ成長できる・成長させられる余地があるのかもしれませんよ。

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